これは『水戸黄門+仮面ライダー+大河ドラマ』ですな。
一話20-30分程度で読めるエピソードが120話ほどで構成されている。一話中には必ず戦争か、謀略か、英雄の描写が入る。エピソードの最後には必ず、「〜はいったいどうなりますでしょうか、それは次回をお楽しみに」のフレーズで終わる。もう、明らかに”男なら誰でも楽しめる週末のエンタテイメント”なのだ。少年期であれば戦闘シーンや英雄の男気に酔うことが出来、青年であれば劉備、曹操、孫権の青雲の志を我が身に置き換えることも出来る。不惑を目の前にした私は戦略や人事について考えさせられる部分が多かった。
戦争は武力を使った国家の意思表現であるため、政治の決定力が重要である。この決定を受けて将軍や参謀は目標事項 - 特定の地域を占領したり、防衛したり、あるいは国家そのものを殲滅したり - を達成するべく努力する。文民統制はこのように機能するべきだが、魏、呉、蜀の三国が成立する前の後漢の政治はもう、メタメタである。「将軍が勝手なことするからみんなでやっつけてくれ」と命令を出しておいて、これが当の将軍にバレるとまったく正反対の命令を当の将軍に出してみたりする。ガバナンスが機能していないのは明白なのだが、その理由を考えると「過度の権限委譲」に行き当たり、これは情報および物資の流通が現代に比べるとむちゃくちゃに遅い3世紀ごろの中国だったら不可避の事項だ。逆に、政治レベルではそのようにしてバランスをとっていくのが効率の良いガバナンスだったのかもしれない。いちいち上に確認とらずに方針(儒教とか易経とか)通りにやっとけ!!という感じで「国中がマニュアル展開して硬直化」してるところへ「柔軟な対応をするスピーディーな戦闘集団」が来たら、そりゃぁ勝てねぇわ。
スターウォーズのような「勧善懲悪一騎打ち」を期待すると、裏切られる。ところどころ荒唐無稽な描写はあるものの、基本はリアルな歴史モノなので戦争は敵の弱点を冷静に突いたり、より上手に計略を組んだほうが勝つし、国家戦略の決定は常にドライである。ドライじゃないのは劉備元徳ぐらいだが、これが逆に無能に見えるのは私が世間ずれしすぎたからか。20万人VS3万人の戦争をやるときに、戦術によって衝突する戦力を1万VS1万5千にして意気をくじき、さらにロジスティクスを絶つことで19万の戦力を無効化する、などの発想は役に立つ。
なんだかんだと3週間かかって読了したのはやはり面白いからだ。おすすめ。