愛死 ダン・シモンズ

3月 4th, 2008 by tsuyoshi Leave a reply »

この作家の本はこれだけしか持っていない。5つの中編が納められているが、これがどうにもこうにも粒ぞろいでおもしろい。技法としてどうこうといった、僕が好きそうな要素はあまりない。が、プロットの着想のよさ、語りの上手さがピカイチである。

例えば「バンコクに死す」。吸血鬼を殺すにはどうするか? 銀の弾丸や日の光で殺してしまってはつまらない。何とかして気づかれずにそっと殺すにはどうするか? こうした着想から始まって、濃密なエロティックサスペンスに話をまとめ上げている。

例えば「大いなる恋人」。レマルクに東映映画の「203高地」、さらに戦場詩人というこれまたロマンティックなんだか大馬鹿なんだかよくわからんものを足しこんで、ミニマリズム風にディテールを描いて見せる。ストーリーは無いに等しいが、書き込みのディテールがグイグイと興味を引っ張って緊張感を維持したまま読み通せる。塹壕の泥の匂いがしてくるようだ、と言えばわかりやすいだろうか。

上手い作家なのでこれ一冊で満足して次に行かなかったのかもしれない。

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