双生児 プリースト

8月 17th, 2009 by tsuyoshi Leave a reply »

プリーストと佐藤亜記は小説界のジョン・シナとバチスタといってもよい、と思っている。本書もやはり、重量級のエンタテイメントである。

プリーストは映画化された「奇術師」や「魔法」などでも同一性の危うさを描いている。が、例えば精神世界の描写に同一性の混濁を表現させた筒井康隆の「パプリカ」と比べると、徹底した歴史資料の読み込みに基づくミスディレクションの構築、小さな矛盾の積み上げ、大きな矛盾のためらいのない断定、異なる世界を乱暴に一つの器に盛り込みつつも、それぞれの世界を微細なまでに描写して見せる筆力と構築力は帯に書かれた「完璧な小説」という讃辞もさもありなん、である。

その分、読者にはやさしくない。
この本の読者は濃密な感情と時代の描写を咀嚼し、理解しながら、同時に矛盾を解き明かさなければならない。そして、残念ながら矛盾は明かされない。絡み合ったプロットと説明は、そのどれが正解であるのかを判別させてくれない。読了しても、読者は何を基準に状況を理解すれば良いのかわからず、呆然とせざるを得ないのだ。原題「The Separation」の通り、分割されたいくつもの現実が絡み合うなかに、読者も巻き込まれてしまう。主人公の双生児達の混乱と矛盾を共有し、小説は終わる。

作者は数百冊の背景資料に目を通してから本書を書いたそうだ。
どおりで、ディテールは分厚く人物は生々しい。

つまり、ものすごく面白いってことです。


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