Archive for the ‘モバイル業界’ category

モバイルでの商売がフライアウトしない理由

7月 7th, 2009

アウンコンサルティング、5億5900万円の特損計上–モバイルSEO不振で:ニュース – CNET Japan

だそうである。
アウンコンサルティングさんは積極的なPRと啓蒙活動が目立っていて、「SEO行けてまっせ!」というメッセージを出しつづけていたので、そこそこうまく行っているんだろうなぁと思っていたらそうでもなかったらしい。
もともと8億なにがしかで買ってきた事業なので、それほど大きな収益力が期待されていたわけでは無いだろうけれど、それでも特損で処理するのは尋常でない。特損は「この事業はこの先数年、ファイナンスする価値も大きく改善する予定もありません」というギブアップだと言える。

が、モバイル業界全体が構造的に特損含みである、と言えなくもない。

もともとキャリアが持っている集客力/集金力(それはすなわち電波免許のことだったりもするんだけど。)にぶら下がって伸びてきた端末屋、ネットワーク屋、コンテンツ屋がキャリアの土管化/携帯電話のコモディティ化によって収益力が加速度的に低下しているのは皆さんご存知のとおり。
かといって、いわゆる情報システムとしてバリバリ使える状態に携帯電話がなっているかといえば、そんなことはない。とにかく画素数を最大化したデジカメ機能に代表されるように機能セットは相変わらずコンシューマにフォーカスしている。

中途半端なCPUと機能セットで、褒められるのはUI/UXのみというコンセプトモデルのようなiPhoneが素晴らしい端末/これまでの携帯端末のバウンダリーを飛び越えたものに見えてしまうのはアプリ開発やコンテンツ利用の自由度が大きく改善されていて、キャリアの描く「俺がプラットフォーム!!」戦略を端から否定している点ではバウンダリーを飛び越えてはいるからだ。ただそれ/Apple独自のバウンダリーを新しく設置していることはPCのときにやっていた囲い込み/独自化戦術からAppleが離れられていない、相変わらずのニッチプレイヤーであることの現われでも、あるのだけれど。

本線に戻ろう。

モバイルのなかでの商売が「コンシューマ向け」商売にフォーカスしている以上、それはすでに陳腐化が一通り行き渡っているキャリアの集客力に大きく依存している。つまり、新規事業が開発できる余地はほとんどない。市場の伸びが低下しているのであれば、位置づけ分類的には「金のなる木」か「負け犬」のどちらかだ。
金のなる木を持つには支配的シェアが必要で、裏返せば大多数のプレイヤーは負け犬になっている。
つまり、キャッシュインが少ないので投資した設備を特損で一括償却でもしないと利益がでないわけだ。

モバイルの中だけで完結するのではアウトだと皆分かっているのだけれど、かといってモバイル外との連携をとろうとしても、なかなかうまくいっていない。プラットフォームとしての整合性の無さ、コンシューマデバイスであることからのSSLなど機能セットの欠如、ETC。

ガツンと一発ボロ儲け、ではなくなったことだけは確かだろう。

収穫逓増はどこへ行った

6月 22nd, 2009

「街の電気屋さんがなくなっていくように、中小ソフトウェア企業もなくなっていくんじゃないか」と言うお話。

畑があるとしよう。そこに小麦がなっていて、収穫をする。刈り取れば、小麦はなくなってしまうのでどんどん減っていく。なくなっていくと、それほど良い畑じゃない場所でも小麦を作らなきゃいけなくなって、効率が落ちていく。これが「収穫逓減」だ。

逆に、取れば取るほど効率が増えてしまうものもあるよね、というのが「収穫逓増」だ。
ソフトウェア業界のパッケージ事業とか、設備投資先行のサービス事業がこれにあたる。一人に売るのも、一万人に売るのも、かかる製造原価はほぼ同じで、販管費のみ投入量を増やせばその分売上がそのまま粗利になって、事業効率がガツガツ上がることになる。ちなみに、そんな人たちが大好きな指標はやっぱりEVITDAで減価償却の話題にはちょっとナーバスだったりもする。

収穫逓増が効くには、あらかじめ出来上がっている「製品」に以下のような条件が備わっている必要がある。

  • 一から自前で作るには手間がかかるもの
  • 既に利用したい機能/サービスが実用上支障なくターンキーで使えるもの

日本国内においてハードウェア、ネットワーク、OSとRDBMSを含むプラットフォームでは既に収穫逓増とよぶよりもコモディティ化が著しいと表現したほうがよい段階にある。そのような状態では当然「収穫逓増」を目指す動きは加速する。パイをどれだけ取れるかを競っていたのが、パイを取らねば事業に必要なサプライチェーンを維持することが出来なくなる段階にある。パイを取るためにはアプリも作ってやらねばならないが、幸いにもインド人やフィリピン人が安い単価で積極的に開発してくれる。

十分な販管費が準備できない中小ソフトウェア企業は収穫逓増戦略は取れず、顧客とのOne2Oneを前提にした「少数精鋭のソフトウェア開発」も、おそらく見向きもしてもらえなくなるだろう。実用上支障が無いものが手に入ることが十分な販管費によって周知されるからだ。

この様な状況下では「収穫逓減」的市場観をもって少数の優良顧客との安定的な取引をすることが出口になりそうな気がするが、ところがどっこい「コースの定理」によってITは内製化することの方が理にかなう、と顧客は判断し始めている。極めてニッチな部分のスペシャリストとして高収益案件のみを小規模な部隊で手がけることぐらいしか、僕のイメージでは出口が無い。

スペシャリストになれる分野が無ければ、徹底したコモディティプレイヤーとして振る舞うまでだ。

携帯電話の立ち位置

6月 2nd, 2009

携帯電話という奴は、いったいなんだろうとここ数日イメージを探している。

携帯電話ってぐらいだから電話なんだけどね。

携帯してるじゃないですか。

で、パーソナルじゃないですか。

で、メールできたりするじゃないですか。

で、WEB見れたりするじゃないですか。簡単なもんだけど。

で、買い物できたりするじゃないですか。

以上、終了なのかどうか、を探している。

PCとの対比で思考するのはすでに前提が違う。基本にしているテクノロジーはともかく、ユーザの利用シーンはまったく違うからだ。また、携帯電話ユーザのマジョリティはPCユーザのそれとは微妙に違う。また、PCユーザとひとくくりにするのが間違いだと言えそうなくらいにPCユーザの裾野は広がったが、携帯電話ユーザはそれ以上に拡がっている。

前段の認識だけでも「以上、終了」とはなりえないはずなのだが、現実問題として携帯電話を取り巻く”経済圏”は急速にしぼんでいる。キャッシュインの口であった、コンテンツの購買と企業の広告(金貸しと無料コンテンツと風俗がメインであっても、だ。)が小さくなった結果、そこで自立する経済がないのだ。ECサイトなどの展開も、勝ち組についてりゃいいがそれ以外のグループは押しなべてダメである。

公共インフラとして充分拡がっているのは確かなのだけれど、そこで開発屋ががっぽがっぽと儲けていく図がなかなかイメージできない。パーソナルなコミュニケーションウィンドウであるのは間違いのないところなので、コンタクトポイントと提供する情報の量、質、タイミングを間違えなければものすごく良いB2Cコミュニケーションデバイスになるはずなのだが。そういうことのできるマーケティングコミュニケーターがまだ出てきていないと言うことか。あるいは、そういうバリューを訴求しきれるだけの素材が世の中に蓄積されていないのか。

俺がそれになるのはなぁ。奥さんと仕事かぶっちゃうしなぁ。

A matter of philosophy

2月 25th, 2009

景気の悪い世の中のご他聞に漏れず、わが社もダメダメである。

そりゃそうだ。
貿易黒字が唯一の「生産資本」と言ってもいいこの国で4ヶ月連続で赤字になってりゃ、回ってくるものがあるはずが無い。
加えて労働人口どころか消費人口も減ってるわ、教育レベルは落ちてるわ、政治は機能不全だわ、金融も構造不良だわでは出口がどこにあるかがなかなか見えづらいのは当たり前である。

事此処に到っては、出口の設定はもはや哲学の問題である。

ラブアンドピースでハッピーな世界を前提とすれば、今こそ投資して事業基盤を大きくするチャンスの時期だ。「世界はいつか立ち直る。みんなでがんばろうよ!」って感じ。「万人の万人に対する闘争」なんだったら、企業体力の根幹である既存事業を如何に健康に保全するか、弱みになりそうな部分をより早く判別して切り離すか、が当面の焦点になる。
そういう哲学なしに、ホッブスをやっちゃうとそれは単なる吝嗇だし縮小再生産が加速するだけだ。哲学なしにラブアンドピースをやると当然、バブル状態になる。

勿論、マクロレベルではラブアンドピースだけどミクロな現場ではホッブス流ってのは日常的に見る。逆はあんまり見たこと無いけど。

世界はどういうものであって、その中で自分はどのように振舞うのか、が哲学である。「どういうものであるべき」とか「どうあるべき」なんてのは基準を外在化しなきゃやっていけない青二才の思考方法なので、いまや立派なおっさんである僕としては「べき」論は排除したい。朝日新聞じゃあるまいし。
CI(Corporate Identity)とか、商品の宣伝戦略を作るときにも当然議論されてきた「差別化」や「立ち位置」や「理念」と同じものだけれど、より透徹した意志、必ずやり遂げるのだ、こうすれば幸せになれるのだといった強烈な方向意識がセットされなければ、やはり吝嗇のうちにフェードアウトしちゃうだろう。

国民の大半が貧しくなれば、そのような哲学や意思は自然と湧き上がってくるのかもしれないけれど、それでは救いが無い。

っつーか、うちの会社はどっち向いてんだよって話なのだけれど、わが身の及ぶところは意思と哲学を持っておきたいねぇ、と。

ソフトバンクがフェムトセル

9月 22nd, 2008

CNETによればソフトバンクモバイルがフェムトセルをNECに発注したとのこと。

MFC(Mobile-Fixed Convergence)とは「どうすればモバイルではデータトラフィックを流すだけの土管屋にならずに、メールサービスとかのアプリケーションレイヤで商売が出来るようにするか」という議論だったと記憶してますが、ソフトバンクさんとしてはもうすっかり「土管は、土管だよ」という達観にたどり着いてしまったようだ。

先日のiPhoneも、サービスレイヤはアップルさんお願いしますよ、というモノだし、ソフトバンクモバイルでデータARPUが上がっているとい話もついぞ聴かない。もともと、大量のデータトラフィックを取り扱うのが苦手なキャリアでもあったので、何とかデータ流量以外のところ-破壊的な料金体系でユーザ数を増やすとか、それほどデータ流量を問わない音声通話だったら無料とか-で収益を稼がなきゃいけない事情もあったのだろうと邪推している。
そんな状況をいっぺんにひっくり返せるわけも無いのだが、ソフトバンクはモバイルを「普通のインターネット」にしてしまうことによって改めてマーケットを作り直そうとしているのだろう。で、ひっくり返ってしまえば…インターネット側で巨大なトラフィックとユーザベースを誇るYahoo!サービスを持つソフトバンクに大きな勝算が生まれることは想像に難くない。
そういう勝ち方をするのであれば、モバイルだって”フツーの土管”と割り切ってしまったほうがいろんな展開がスムーズだ。

NTTドコモさんもGoogleとの関係が深くなっていっているような気配がする。
が、その絵だとドコモさんは”土管”になってもグループの外にキャッシュが流れ出すことになる。
ならばi-Modeは死守しなきゃいけないんだけれど、今回のような、そしてドコモ自身も展開しているような「これまで使っていた以外の電波を使って通信する」ことが進んでいくならば、アプリケーションがi-Modeサービスであることの必然性はどんどん薄れていく。どちらかといえば、G-Mailとかの方が容量もたっぷりで使いやすい。

そうすると、やっぱり「コモディティとしてのインターネットサービス」を追求するところが次の10年を勝ち残るんじゃないのかな。

差別化なんか、もう古いのかも。

閉塞感

7月 8th, 2008

何だかんだと言ってこれで10年ちかく携帯電話関連で飯を食わせてもらったことになる。

2000年に着メロプロバイダのCTOをやったのを皮切りに、キャリアでのメールサービス担当、フリーのコンサルタント、着うたプロバイダでの社内コンサル、検証関連サービスの再構築とこなしてきている中で今ほどモバイル業界のモメンタムが減じているのを感じたことはない。

iPhoneの盛り上がりやソフトバンクの14ヶ月連続No.1が意味しているのは、コンテンツ市場におけるキャリア主導の垂直統合構造の陳腐化だ。これ自体は2005年ぐらいから緩やかに進行してきているのだが、これを補っていたいわゆる勝手サイトのビジネスが成り立たなくなってきている。ものすごく簡単に言ってしまえば、携帯電話だけで完結する商売はもうダメだ。PCサイトやリアル店舗との連携で生活感のあるサービスに対して展開できなければ、生き残れない。

で、これがモバイル業界の閉塞感に他ならない。
だってリアルなところで商売やってる大人とは文化も生活も違う連中がコンテンツ商売やってたんだもん。
逆に地べたでセールスプロモーションやってた人たちとか、チラシ屋さんとかの方がチャンスがあるかもしれない。
あるいは、スーパーの店長さんがそのまま使えるようなASPとか。
で、これまた「モバイル業界」の連中には苦手なところだったりする。

そしてその中にいる僕も閉塞感バリバリ。

どうすりゃいいもんやら。